大学共同利用機関である分子科学研究所は,国際的な分子科学研究の中核拠点として所内外の研究者を中心とした 共同研究と設備を中心とした共同利用を積極的に推進し,大学等との人事流動や国際交流を活性化しながら,周辺分 野を含めた広い意味の分子科学の発展に貢献する使命を持っている。
分子科学研究所が行う事業には,『先端的な研究を推進する拠点事業』,『国内の研究者への共同研究・共同利用支 援に関する事業』,『研究者の国際ネットワーク構築に関する事業』がある。予算的には運営費交付金の一般経費・特 別経費,文部科学省の委託事業,日本学術振興会等の競争的資金で実施している。運営費交付金の一般経費以外はい ずれも期間が定められており,運営費交付金一般経費も毎年削減を受けている。第1期中期計画期間に特別経費であっ た3事業(U V S OR 共同利用事業,エクストリームフォトニクス連携事業,研究設備ネットワーク事業)は平成22年 度からの第2期中期計画の開始において相当予算削減された上で一般経費化された。なお,スーパーコンピュータ共 同利用事業の特別経費については第1期中期計画期間の段階からすでに一般経費化されている。これら事業の継続は 認められているが,今後も運営費交付金一般経費の予算削減は続くと予想され,第1期中期計画期間と同じ水準での 事業実施は困難である。すべての事業の精査を行い,重点化するなど事業を絞り込むこと,また,新たな事業に機動 的に取り組むことが必要である。
(1)『先端的な研究を推進する拠点事業』としては,U V S OR 共同利用事業(放射光分子科学),エクストリームフォ トニクス連携事業(レーザー分子科学)に関連するものとして,文科省で「光・量子科学研究拠点形成」プロジェ クトが走っている。研究所としては,量子ビーム基盤技術開発プログラム(U V S OR が代表),光創成ネットワーク 研究拠点プログラム(分子科学研究所は分担)を受託,実施している。前者は平成24年度まで,後者は平成29年 度までの事業である。また,スーパーコンピュータ共同利用事業(理論計算分子科学)に関連するものとして,文 科省で「最先端・高性能スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトが走っている。研究所としては平成18 年度より「次世代ナノ統合シミュレーションソフトウエアの研究開発」拠点のナノ分野の「グランドチャレンジア プリケーション研究」を推進している。この事業は平成23年度で終了した。
(2)『国内の研究者への共同研究・共同利用支援に関する事業』のうち,実験研究のための共同利用は機器センター 及び分子スケールナノサイエンスセンターが担当している。機器センターでは,研究設備ネットワーク事業(平成 19年度から「化学系研究設備有効活用ネットワークの構築」,平成22年度より「大学連携研究設備ネットワーク による設備相互利用と共同研究の推進」)を進めており,分子スケールナノサイエンスセンターは,文科省の研究 施設共用イノベーション創出事業「ナノテクノロジーネットワーク」の「中部地区ナノテク総合支援」プロジェク トの幹事機関として,共同利用設備の共用を推進している。前者の大学連携研究設備ネットワーク事業については, 当初の3つの目的,全国的設備相互利用,設備復活再生,最先端設備重点配置のうち,第2期中期計画期間では, 最初のものだけが生き残り実施されることになったが,今後も運営費交付金の削減が予定されており,第2期中期 計画期間中に事業の方向性を見直す必要がある。一方,後者のナノテクノロジーネットワーク事業は運営費交付金 の事業ではなく,平成23年度で終了した。このような背景で,平成24年度以降の共同利用設備の安定的な運営を 勘案し,現在,分子スケールナノサイエンスセンターの共同利用設備も機器センターに集約し,予算面では運営費 交付金一般経費に頼るばかりでなく,組織的に適切な外部資金等を新たに獲得して,予算減を補うようにする方向
5.各種事業
(3)『研究者の国際ネットワーク構築に関する事業』としては,個人ベースの萌芽的な取り組みと組織ベースの国際 共同研究拠点の形成がある。従来からの外国人顧問制度,客員外国人制度,招へい外国人制度,国際研究集会(岡 崎コンファレンスなど)を実施すると同時に,第1期中期計画期間から独自の分子研国際共同プログラムを進めて きた。このプログラムは個人ベースの国際共同研究のきっかけ(萌芽的国際共同)を作るものである。さらに国際 共同研究拠点として組織ベースで取り組むために,第2期中期計画期間においては,自然科学研究機構としての運 営費交付金特別経費で「自然科学研究における国際的学術拠点の形成事業」がスタートした。分子科学研究所では,
「分子科学国際共同研究拠点の形成」による新たな取り組みの検討とその準備(協定締結等)が始まっている。また, 日本学術振興会の多国間交流事業「アジア研究教育拠点事業」の一環として,「物質・光・理論分子科学のフロンティ ア」(平成18年度〜平成22年度)の事業を行ってきた。これまで5年間,日中韓台の4拠点(協定をそれぞれ締結) を中心にしてマッチングファンド方式での様々な試みを行った。平成23年度以降は,これまでの経験を踏まえて 精査を行った上で集中・重点化し,上記「分子科学国際共同研究拠点の形成」の予算枠で実施している。また,分 子科学研究所は,政府による21世紀東アジア青少年大交流計画(J E N E S Y S プログラム)の枠で設定された日本学 術振興会の「若手研究者交流支援事業」に平成20年度より毎年,応募・採択され,対象国の若手研究者(院生を 含む)の人材育成に貢献しているところである。このようにアジア地区の国際ネットワークを構築すると同時に, さらに米国,欧州,インド,イスラエルとの国際共同研究を強化していく予定である。
5-1 大学連携研究設備ネットワークによる設備相互利用と共同研究の促進
(文部科学省)
化学系の教育研究組織を持つ全国の機関が連携し,老朽化した研究設備の復活再生,および,最先端研究設備の重 点的整備を行い,大学間での研究設備の有効活用を図ることを目的として,文部科学省特別経費「化学系研究設備有 効活用ネットワークの構築」事業が平成19年度よりスタートした。平成22年度からは「大学連携研究設備ネットワー クによる設備相互利用と共同研究の促進」事業として経常経費化された。
本ネットワークには国立大学ばかりでなく,私立大学や企業も含めて全国87の機関が参加している。平成24年2 月3日現在,登録機器数は 401 台,うち外部公開設備は 298 台,学内専用設備は 103 台となっている。ユーザー総数は, 7,114 名である。
昨年度に引き続き,本年度も,13の地域から提案された共同研究プロジェクトと復活再生事業を実施した。また, 平成23年3月11日に発生した東日本大震災に際して,「相互利用・測定依頼を受け入れ可能な設備」の情報を収集し, ホームページにて一覧を掲示(3月17日対応),震災下で困難な状況に直面した研究者の方々を支援する取り組みを 行った。
本ネットワークの周辺状況として留意すべきは,文部科学省が本年度より「施設サポートセンターの整備」事業を 開始したことである。これは,大学における設備マネジメント機能を強化することにより,教育研究設備の有効活用 を促進し,「強い人材」を育てるための教育研究環境を整備することを目指したプログラムであり,そのための設備 サポートセンター設立を支援するものである。本年度は6大学が採択され,3年間の事業がスタートしている。「設 備サポートセンター」事業は本ネットワークと理念を共有し,かつ,連携を行うことによって具体的なメリットも多々 あると考えられる。例えば,各大学が個別にシステム構築を行うことは大きな負担であるが,ノウハウの蓄積がある「設 備ネットワーク」のシステムを援用することによって大幅な効率化が図れる。一方,現行の「設備ネットワーク」は 主に化学系分野を中心に企画されたものであり,大学の全部局をカバーすべき「設備サポートセンター」との連携には, システム構成を十分に検討する必要がある。
以上の現状を踏まえて,「設備サポートセンター」事業の該当校ならびに地域代表校を中心として緊密な連絡・協 議を行い,本ネットワークにおける現行の設備管理システムの再構成に着手することが,本年度2月に開催された協 議会で承認された。学内研究設備の有効活用は全ての大学において重点課題であり,大学間施設共用・有効利用のシ ステムと有機的に連携することは,単に「設備サポートセンター」事業の関連校のみならず,全ての大学にとって大 きなメリットをもたらすものである。
5-2 連携融合事業「エクストリームフォトニクス」 (文部科学省)
平成17年度から理化学研究所との連携融合事業として「エクストリーム ・ フォトニクス」を推進している。「光を 造る」,「光で観る」,「光で制御する」という3つの観点から,両研究所が相補的に協力交流することによって,レーザー 光科学のより一層の進展を図ろうとするプログラムである。分子研側からは,3つの観点のそれぞれにおいて以下の 課題を選定し,いずれも精力的に研究を推進してきた。
(1) 「光を造る」
「光波特性制御マイクロチップレーザーの開発」(平等) (2) 「光で観る」
「時間・空間分解分光による固体表面・ナノ構造物質表面における反応研究」(松本)
「エクストリーム近接場時間分解分光法の開発」(岡本) (3) 「光で制御する」
「アト秒コヒーレント制御法の開発と応用」(大森)
「紫外強光子場による反応コヒーレントコントロール」(菱川)
「高強度極短パルス紫外光を用いた超高速光励起ダイナミックスの観測と制御」(大島)
これらの課題の成果は,既にScience 誌,Nature Physics 誌,Physical Review Letters 誌,Nature Methods 誌などの超 一流の学術誌に度々発表されただけでなく,多数の新聞各紙で取り上げられ社会的にも大きな注目を集めた。また, 日本学士院学術奨励賞,日本学術振興会賞,アメリカ物理学会フェロー表彰,文部科学大臣表彰若手科学者賞,日本 化学会進歩賞,日本分光学会奨励賞,光科学技術研究振興財団研究表彰,英国王立化学会 P C C P 賞など,多くの権威 ある表彰の対象となってきた。また,マイクロチップレーザーの開発では,産業界との共同研究が進展した。
この他に,両研究所の研究打合せや成果報告のため,毎年2回,定期的に理研・分子研合同シンポジウムを開催し ている。平成17年度は,4月に理化学研究所にて第1回の合同研究会を開催した。この研究会では,各参加グルー プのリーダーがそれまでの研究成果を紹介した上で今後の研究計画を披露し,これを中心に議論を行った。これに対 して,11月には「分子イメージングとスペクトロスコピーの接点」を主題とした研究会を行い,より突っ込んだ議 論を進めた。平成18年度は,4月に理化学研究所にて第3回理研・分子研合同シンポジウムを開催した。このシン ポジウムでは特に「エクストリーム波長の発生と応用」をテーマとし,テラヘルツ光やフェムト秒X線の発生と利用 について議論した。さらに,11月には「コヒーレント光科学」を主題とした第4回の研究会を行い,この方面にお ける所外の研究者にも講演を依頼し,より突っ込んだ議論を進めた。平成19年度は,4月に理化学研究所にて「バ イオイメージング」をテーマに第5回シンポジウムを開催した。ここでは,高感度レーザー顕微鏡やテラヘルツ分光 を利用した生体系のイメージングについて議論した。さらに,11月には「先端光源開発と量子科学への応用」を主 題とした第6回シンポジウムを行い,高強度超短パルスレーザーを始めとする先端レーザー光源の開発と,それらを 原子分子クラスターあるいは表面ダイナミクスの観察や制御へと応用した研究成果と今後の展望について議論した。 平成20年度は,5月に理化学研究所にて「イメージング」をテーマに第7回シンポジウムを開催した。ここでは, 超高速分子イメージング;生体分子イメージング;テラヘルツイメージングについて議論した。さらに,11月には
「U l traf ast. meets. ul trac ol d」を主題とした第8回シンポジウムを行い,超高速コヒーレント制御や極低温分子の生成, およびそれらの融合が生み出す新しい科学に関する研究成果と将来展望について議論した。平成21年度は,5月に 理化学研究所にて「光で繋ぐ理研の基礎科学」をテーマに第9回シンポジウムを開催した。ここでは,これまでに本
事業によって推進された理研の光科学研究の成果を総括するとともに,今後の展開についての意見交換が行われた。 さらに,11月には蒲郡にて分子科学研究所が主催で「凝縮系における量子の世界」と題した第10回シンポジウムを 行い,固体やナノ構造体の量子性を対象にした新しい研究領域の可能性について議論した。平成22年度は,10月に 理化学研究所にて「顕微分光技術と生物科学との接点」をテーマに第11回シンポジウムを開催した。平成23年度は, 6月に理化学研究所にて第12回シンポジウムを開催した。今年度は,東日本大震災の影響や夏場の電力事情等も考 慮し ,. 発表者は理研および分子研のメンバーに限定するなど,例年よりも若干小規模なシンポジウムとなった。特に 今後の研究グループ間の研究交流をより促進することを目指し,各グループの若手・中堅研究者を主体にしたプログ ラム構成とした。いずれのシンポジウムにおいても,両研究所内外の研究者に講演を依頼し,関連分野の先端につい て深い議論を行った。
また,このプログラムを中心に,所内に日常的な議論の場としての光分子科学フォーラムを設け,光分子科学の進 展を図っている。
5-3 分野間連携(自然科学研究機構)
5-3-1 概要
自然科学研究機構の法人化後第1期中期計画期間(平成16〜21年度)には,新分野創成型連携プロジェクトとし て「分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成事業」が行われたが,平成22年度から第2期中期計画期間となり, これが再編され「自然科学研究における国際的学術拠点の形成事業」と「新分野の創成」となった。
「自然科学研究における国際的学術拠点の形成事業」では,分子科学研究所,国立天文台,核融合科学研究所が共 同して進める「シミュレーションによる『自然科学における階層と全体』に関する新たな学術分野の開拓」,分子科 学研究所が主体的に進める「分子科学国際共同研究拠点の形成」等のプロジェクトが行われることとなった。(この 内前者には,平成21年度までに実施してきた「巨大計算新手法の開発と分子・物質シミュレーション中核拠点の形成」 及び「自然科学における階層と全体」が発展的に展開されることとなった。)またこの他に機構内で提案公募に基づ いて選考・実施する「若手研究者による分野間連携研究プロジェクト」を行い,分子科学研究所が中心となる課題と して平成23年度は2件が採択・実施された。
「新分野の創成」では,機構の新分野創成センターが主体的に行うプロジェクトが行われている。これには,平成 21年度まで「分野間連携」の一環として行われた「イメージング・サイエンス」が組み込まれる形となっている。
5-3-2 イメージング・サイエンス
(1) 経緯と現状
研究所の法人化に伴い5研究所を擁する自然科学研究機構が発足し,5研究所をまたぐ新研究領域創成の一つのプ ロジェクトとして「イメージング・サイエンス」が取り上げられることとなった。以下に,その経緯と現状について 述べる。
平成16年度に機構が発足した後,研究連携室で議論がなされ,機構内連携の一つのテーマとして「イメージング・ サイエンス」を立ち上げることが決定された。連携室員の中から数名の他に,各研究所からイメージングに関連する 研究を行っている教授・准教授1〜2名が招集され,「イメージング・サイエンス」小委員会として,公開シンポジ ウムその他プロジェクトの推進を担当することとなった。
平成17年8月の公開シンポジウム(後述)の後,小委員会において,本プロジェクトの具体的な推進について議 論を行った。この機会に,各研究所が持つ独自のバックグラウンドを元に,それらを結集して,広い分野にわたる波 及効果をもたらすような,新しいイメージング計測・解析法の萌芽を見いだすことが理想,という議論がなされた。 それに向けた方策として,機構内の複数の研究所にまたがる,イメージングに関連する具体的な連携研究テーマをい くつか立てる案を連携室に提案したが,予算の問題等もあってこれは実現しなかった。
その後,機構の特別教育研究経費「分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成」の新分野創成型連携プロジェ クトの項目として,イメージングに関連した研究所をまたがる提案が数件採択・実施された(「イメージング・サイエ ンス—超高圧位相差電子顕微鏡をベースとした光顕・電顕相関3次元イメージング—」など)。これが上述の提案に代 わるものとして,「イメージング・サイエンス」に係る具体的な機構内連携研究を推進した。平成20年度には,岡崎 統合バイオサイエンスセンター(生理研)の永山教授を中心に再編された小委員会が招集され,国立天文台に設置さ れた一般市民向け立体視動画シアター「4D 2U」(4-dimensional.to.you)を利用した,広報コンテンツ作成に関する検討 が開始された。5研究所がもつイメージングデータを元に,機構の研究成果を一般市民向けに解説する立体動画集の 制作を目論んでいる。同時に,イメージングを中心とした機構内連携の新たな展開について議論を行っている。平成
21年度に機構本部の下に,5研究所が連携して自然科学の新しい分野や問題を発掘することを目指して,新分野創 成センターが設置され,その中にブレインサイエンス研究分野及びイメージングサイエンス研究分野がおかれた。イ メージングサイエンス研究分野は5研究所から1名ずつの併任教授が就任した。また外部からの任期付き客員教授1 名及び実動部隊としての博士研究員若干名を公募し,上述のようなイメージングコンテンツの新たな表示法や,イメー ジからの特徴抽出の手法等の開発を推進することとなった。現在客員教授及び特任助教,博士研究員が,実際の活動 を行っている。平成22年度には,イメージングサイエンス研究分野所属の研究者と,関連する分野の大学の研究者 が集まり,新たな「画像科学」を展開する研究領域を立ち上げる活動の模索を開始し,平成23年度もその取組みを 継続している。また平成23年度には,機構内でイメージングサイエンスに関わる研究プロジェクトを公募し,8件 のプロジェクト研究と2件の研究会(但し2件を1件に集約して実施することとなった)が採択された。
(2) 実施された行事
このプロジェクトの具体的な最初の行事として,各研究所のイメージングに関わる興味の対象と研究ポテンシャル を,5研究所が互いに知ることを目的として,「イメージング・サイエンス」に関する公開シンポジウムを開催する こととなった。
平成17年8月8日−9日に,「連携研究プロジェクト Imaging.S cience 第1回シンポジウム」として,公開シンポジ ウムが岡崎コンファレンスセンターで開催された。このシンポジウムでは,天文学,核融合科学,基礎生物学,生理学, 分子科学におけるイメージング関連研究に関する,機構内外の講師による16件の講演,及び今後の分野間連携研究 に関する全体討論が行われた。参加者は機構外36名,機構内148名,大学院生80名,合計264名を数えた。また, 講演と全体討論の内容は,175 ページのプロシーディングス(日本語)としてまとめられ,同年12月に発行された。 この機会によって機構内のイメージング・サイエンス関連研究に関する研究所間の相互理解が進み,その後の機構内 連携研究の推進に相当に寄与したと考えられる。
平成18年3月21日には,立花隆氏のコーディネート,自然科学研究機構主催で「自然科学の挑戦シンポジウム」 が東京・大手町で開催された。これは,一般の市民を対象に,機構の研究アクティビティーをアピールすることを目 的として,立花氏が企画して実現したもので,当日は約600名収容の会場がほぼ満席となる参加があった。このシン ポジウムの中で,「21世紀はイメージング・サイエンスの時代」と称して,イメージングを主題とするパネルディス カッションが組まれた。ここにはパネラーとして「イメージング・サイエンス」小委員会委員を中心とする講師によっ て,5研究所全てから,各研究所で行われているイメージング関連の研究の例が紹介され,最後に講師が集まりパネ ルディスカッションが開かれた。このシンポジウムの記録の出版は諸々の事情で遅れていたが,平成20年度にクバ プロから出版された。
平成18年12月5日−8日には,第16回国際土岐コンファレンス(核融合科学を中心とする国際研究集会)が核 融合研究所主催で土岐市において開催された。この会議ではサブテーマが“ A dvanced. Imaging. and. Plasma. D iagnostics” とされ,プラズマ科学に限らず,天文学,生物学,原子・分子科学を含む広い分野におけるイメージング一般に関す るシンポジウムとポスターセッションが企画された。分子科学研究所からも,数名が参加し,講演及びポスター発表 を行った。また平成19年8月23日−24日には,「画像計測研究会2007」が核融合科学研究所一般共同研究の一環 として,核融合科学研究所において開催された。平成20年11月10日−13日には,第39回生理研国際シンポジウ ムとして,“ F rontiers.of.B iological.Imaging—S ynergy.of.the.A dvanced.T echniques” が開催され,機構内のイメージングに 関わる研究者も数名(分子研1名)が講演を行った。平成22年3月21日には,再び立花隆氏のコーディネートによ る自然科学研究機構シンポジウム(東京で開催)において,イメージングサイエンスを取り上げた。平成22年12月
28日には,核融合科学研究所において,イメージングサイエンス研究分野所属の研究教育職員と様々な関連分野の 全国から研究者が集まり,「画像科学シンポジウム」が開催された。平成24年3月5,6日には,岡崎コンファレン スセンターにおいて,基生研バイオイメージングフォーラムと合同で「画像科学シンポジウム」が開催された。
5-3-3 シミュレーションによる 「自然科学における階層と全体」 に関する新たな学術分野の開拓
本プロジェクトは,シミュレーションを利用した理論計算科学研究を推進することにより,分子スケールからメソ スケールにおける物質や生体の機能や物性に繋がる電子・分子ダイナミクスの多様性・階層性の解明を目的とする。 また,理論計算科学研究の推進に加え,分子スケールの機能や物性から固体物質,ソフトマター,生物における機能 や物性の実験研究を通して分子の階層性の解明を進め,新たな分子科学すなわち協奏的分子科学分野の形成を目指し ている。
国 際 シ ン ポ ジ ウ ム と し て, 7 月 に 日 韓 分 子 科 学 シ ン ポ ジ ウ ム“ N ew. V i si ons. f or. S pec trosc opy. and. C omputati on:. T emporal. and. S pati al. A dv entures. of. M ol ecul ar. S ci ences,” 10月にはミニ国際シンポジウム“ R ecent. D ev el opments. of. S pectroscopy.and.S patial.and.T emporal.Hierarchical.S tructures.in.Molecular.S cience” を開催するとともに,協奏的分子科学 分野におけるセミナーを開催した。また,人材育成を目的として分子シミュレーションおよび電子状態理論に関する 講習会を開催した。さらに,理論計算による自然界における階層と全体を俯瞰することを目的に,国立天文台および 核融合科学研究所を中心とする理論研究者と,M D シミュレーションとその応用,低電離プラズマ物理と磁気理コネ クション,物体の表面現象をキーワードにした合同シンポジウムを開催した。
理論計算分子科学セミナー 11 回
第5回分子シミュレーションスクール—基礎から応用まで— 平成 23 年 12 月 12 日〜 15 日 第1回量子化学ウィンタースクール—基礎理論を中心として— 平成 23 年 12 月 19 日,20 日 日韓分子科学シンポジウム 平成 23 年 7 月 6.〜 8 日
ミニ国際シンポジウム 平成 23 年 10 月 18 日
分子科学研究所・国立天文台・核融合科学研究所合同シンポジウム 平成 24 年 2 月 10 日,11 日
5-4 アジア研究教育拠点事業
21世紀はアジアの時代と言われている。分子科学においても欧米主導の時代を離れ,新たな研究拠点をアジア地 域に構築し,さらにはアジア拠点と欧米ネットワークを有機的に接続することによって,世界的な研究の活性化と新 しいサイエンスの出現が期待される。
分子科学研究所では,平成18年度より平成22年度までの5年間にわたり日本学術振興会・アジア研究教育拠点事 業(以下「J S PS アジアコア事業」という。)「物質・光・理論分子科学のフロンティア」を展開してきた。本事業は「我 が国において先端的又は国際的に重要と認められる研究課題について,我が国とアジア諸国の研究教育拠点機関をつ なぐ持続的な協力関係を確立することにより,当該分野における世界的水準の研究拠点の構築とともに次世代の中核 を担う若手研究者の養成を目的として(日本学術振興会ホームページより抜粋:http://www.jsps.go.jp/j-acore/00gaiyou_ acore.html)」実施されたものである。上記 J S PS アジアコア事業においては分子科学研究所(I M S ),中国科学院化学 研究所(IC C A S ),韓国科学技術院自然科学部(K A IS T ),台湾中央研究院原子分子科学研究所(IA MS )を日本,中国, 韓国,台湾の東アジア主要3カ国1地域の4拠点研究機関と位置づけ,また4拠点研究機関以外の大学や研究機関の 積極的な研究交流への参加を得て,互いに対等な協力体制に基づく双方向の活発な研究交流を進めることができた。
平成23年度には上記 J S P S アジアコア事業の後継として,分子研独自の予算による I M S アジアコア事業「東アジ アにおけるポスト・ナノサイエンスを指向した分子科学研究」を実施している。これは上述の J S P S アジアコア事業 によって醸成した IMS -IC C A S -K A IS T -IA MS 相互のパートナーシップをさらに発展させ,研究会,セミナー,共同研究, 研究者交流を深めるためのプラットフォーム的プロジェクトであり,平成23年度研究集会として,「第4回日韓生体 分子科学セミナー—実験とシミュレーション」(日本・奈良),「中日機能性超分子構築シンポジウム」(中国・北京) が開催された。また教育・研究集会としては,平成24年2月に「T he. W inter. S chool. of. A sian-C ore. Program. ( B eijing)」 が I C C A S のホストにより日本・韓国・台湾から 100 人超の参加を得て開催された。教育面での関連事業としては, 平成24年1月に「総研大 アジア冬の学校」(日本・岡崎)も開催している。「東アジアにおけるポスト・ナノサイ エンスを指向した分子科学研究」は来年度以降の更なる充実と発展を目指している。
5-5 ナノテクノロジーネットワーク事業「中部地区ナノテク総合支援」
(文部科学省)
5-5-1 概要
分子科学研究所は,平成19年度より平成23年度まで名古屋大学,名古屋工業大学,豊田工業大学の愛知県内機関 と連携して,文部科学省の先端研究施設共用イノベーション創出事業・ナノテクノロジーネットワークプロジェクト を受託し,中部地区ナノテク総合支援事業を展開している。中部地区にナノテクノロジー総合支援拠点を形成し,ナ ノ計測・分析(分子研・名工大),超微細加工(名大・豊工大),分子・物質合成(分子研)の3つの指定領域にわたっ て,超高磁場 N M R ,先進電顕等の最先端機器利用,有機・生体関連分子等の設計合成評価,最先端設備技術を用い た半導体超微細加工等を総合的に支援している。特に,各要素単体の支援に留まらず,4機関の特徴を活かした連携 融合支援を推進している。
分子科学研究所では,分子スケールナノサイエンスセンターが母体となり,超高磁場 N M R ,300k V分析透過電子 顕微鏡,時空間分解近接場光学顕微鏡,紫外磁気円二色性光電子顕微鏡などの先端機器利用や,有機・生体関連分子 等の設計合成評価,大規模量子化学計算支援を実行している。平成23年度は協力研究40件,施設利用63件を採択し, うち協力研究31件,施設利用44件は実施した。所内利用も63件に上っている。
表1に分子科学研究所が担当する支援装置・プログラムの一覧,表2に平成23年度採択課題一覧を示す。支援は, 担当研究者と共に研究を進めてゆく協力研究と,装置に関する十分な知識と経験を有する研究者が随時の申し込みに よって当該装置を利用する施設利用の何れかの申し込みを通して行われる。課題申請等の詳細は http: //nanoi ms. i ms. ac . j p/ にあり,本務の共同利用と同様に,通常申請(年2回)と随時申請がある。申請は分子スケールナノサイエン スセンター運営委員会の下部組織であるナノネット小委員会で審査される。本務の共同利用と異なり,本事業では産 業界からの申請も無償(ただし結果の公開が義務付けられる)で幅広く受け付けている。
なお,成果等に関しては本冊子8章の分子スケールナノサイエンスセンターの節に記載した。
表1 支援装置・プログラム一覧(分子科学研究所担当分)
支援装置・プログラム 装置・プログラムの概要 支援責任者 所属
近 接 場 分 光 イ メ ー ジ ン グ 支援(S NOM)
新 規 光 物 性,コヒーレ ント 光 制 御, 超 高 速 セ ン サ ー, 光加工・メモリ,エネルギー情報 伝達,ナノデバイス 等に向けたフェムト秒時間分解近接場顕微鏡支援。空 間分解能 50. nm,励起光 T i : sapphi re(780–920. nm. 100. fs)または各種CW。透過,ラマン,非線形に対応。超 高速分光を兼備した世界的に類のないオリジナル機器。
岡本裕巳教授 光 分 子 科 学 研 究領域
高 分 解 能 透 過 分 析 電 子 顕 微鏡支援(T E M)
ナノ粒子などの構造および電子状態解析のための電界 放 出 型 エ ネ ル ギ ー フ ィ ル タ ー 高 分 解 能 透 過 電 子 顕 微 鏡。J E OL J E M-3200,粒子像分解能 0.17. nm,格子像分 解能 0.10. nm。走査像観察,nm 領域の元素分析,液体 窒素冷却も可能。主に施設利用に対応。
横山利彦教授 物 質 分 子 科 学 研究領域
磁 気 光 学 表 面 ナ ノ 磁 性 評 価支援
新規磁性材料・ナノ磁性体の磁気特性観測を目的とし た紫外磁気円二色性光電子顕微鏡(U V . M C D . P E E M) と超伝導磁石X線磁気円二色性(X M C D )計測支援。 UV . MC D . PE E M は当グループ発見に基づく全く独創的 な機器。空間分解能 50. nm,超高速時間分解計測にも 対応予定。超伝導 X M C D は U V S OR 利用,7. T ,2. K 。 他に超高真空磁気光学 K err 効果測定装置(0.3.T ,100.K ) も提供。
横山利彦教授 物 質 分 子 科 学 研究領域
集 束 イ オ ン ビ ー ム 加 工 と 走査電子顕微鏡支援(S E M/ F IB )
集束イオンビーム加工と走査電子顕微鏡を提供。主に 施設利用に対応。
横山利彦教授 物 質 分 子 科 学 研究領域
X線光電子分光支援
(E S C A )
汎用のX線光電子分光器(Al,Mg-Kα 線利用)を提供。 施設利用として気軽に利用いただける。
横山利彦教授 物 質 分 子 科 学 研究領域
分 子 レ ベ ル 触 媒 設 計 と 構 造解析支援
各種固体触媒表面の設計手法により,分子レベルで固 体 触 媒 表 面 の 構 造 を 設 計 し, ま た, 固 体 N M R , 赤 外 分光,ラマン分光,X A F S 等の各種分光法を用いた固 体触媒の構造解析の支援,特に,触媒反応が進行して いるその場で in-situ 構造解析を重点的に支援する。
唯美津木准教授 物 質 分 子 科 学 研究領域
有機半導体デバイス・評価 支援
有機半導体を用いたデバイスや有機太陽電池の作製・ 評価を支援。結晶析出昇華精製装置,真空蒸着装置に よるデバイス作製,擬似太陽光源を用いた太陽電池特 性評価,S PM,X PS /U PS ,S E M,ミクロトーム等によ る有機半導体薄膜のナノ空間・電子構造の評価が可能。
平本昌宏教授 分 子 ス ケ ー ル ナ ノ サ イ エ ン スセンター
超高磁場 N M R ナノ計測支 援
920M H z. N M Rに よ る 難 結 晶 蛋 白, 固 体 ナ ノ 触 媒, 有 機 − 無 機 複 合 コ ン ポ ジ ッ ト, カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ, 巨大天然分子などの精密構造解析支援。現状世界最高 レ ベ ル の 920M H z. N M R 。 固 体, 多 次 元, 3 重 共 鳴 に も対応。
加藤晃一教授 横山利彦教授
生 命・ 錯 体 分 子 科 学 研 究 領 域
大規模量子化学計算支援 ナノ分子系の構造・電子状態・機能の研究およびこれ らの設計と合成の高効率化のための高精度大規模量子 化学計算シミュレーション。クラスター PC 。
永瀬 茂教授 理 論・ 計 算 分 子 科 学 研 究 領 域
機 能 性 有 機 ナ ノ 材 料 設 計 支援
機能性有機ナノ材料,金属半導体クラスター,生体系 を規範とした有機ソフトナノ分子などの合成経路探索 設計。
鈴木敏泰准教授 永田 央准教授 櫻井英博准教授
分 子 ス ケ ー ル ナ ノ サ イ エ ン スセンター
連結方法の異なる色素オリゴマーの立体構造と電子状態の解明
920MHz 超高磁場 NMR 装置を用いた自己集合性錯体の磁場配向性の評価 920MHz 超高磁場 NMR によるアミロイド β ペプチドの重合開始機構の 構造生物学的基盤の解明
S iC 表面分解法により生成したカーボンナノチューブアレイ構造への ドーピングに関する研究
S iC 表面分解法におけるカーボンナノチューブの構造制御 920MHz 超高磁場 NMR 装置を用いたタンパク質複合体の構造解析 高分解能透過分析電子顕微鏡による C o/Pt 微粒子の構造解析 高周期元素の特性を活かした新規ナノスケール分子の開発
有機 - 希土類ハイブリッド薄膜発光体の基礎物性測定と発光体実装プロ セスの最適化
X MC D による吸着 NO の磁性評価
常磁性金属内包フラーレン誘導体の電荷移動特性
湾曲 π 電子系化合物と金属内包フラーレンに基づく超分子系の構築 金属ナノ構造体の増強光電場によるジアセチレン L B 膜の二光子光重合 反応の検討
スマネン誘導体を1次元精密配列することによる機能性物質検索 超高磁場下での1H スピン拡散 NMR 測定による結晶構造解析法の開発 S iC 表面分解法におけるカーボンナノチューブの構造制御
宇 野 英 満 佐 藤 宗 太 柳 澤 勝 彦. 丸 山 隆 浩. 丸 山 隆 浩 矢 木 宏 和 嶋 睦 宏 時 任 宣 博 西 山 桂. 奥 山 弘 赤 阪 健 土 屋 敬 広 坂 本 章. 岡 崎 俊 也 朝 倉 哲 郎 丸 山 隆 浩 愛媛大学大学院理工学研究科
東京大学大学院工学系研究科
(独)国立長寿医療センター研究所. 名城大学理工学部.
名城大学理工学部
名古屋市立大学大学院薬学研究科 岐阜大学工学部
京都大学化学研究所 島根大学教育学部. 京都大学大学院理学研究科 筑波大学生命領域学際研究センター 筑波大学生命領域学際研究センター 埼玉大学大学院理工学研究科.
(独)産業技術総合研究所 東京農工大学大学院工学研究院 名城大学理工学部
5-5-2 2011 年度採択課題一覧(分子科学研究所担当分)
(1) 協力研究
. 課 題 名(前期). 支援装置. 代 表 者
有機材料 NMR NMR . T E M. E S C A NMR T E M 量子計算 有機半導体. 磁気光学 量子計算 有機材料 S NOM. 有機材料 NMR 有機半導体
. 課 題 名(後期). 支援装置. 代 表 者
920MHz 超高磁場 NMR 装置を用いた自己集合性錯体の磁場配向性の評価 920MHz 超高磁場 NMR によるアミロイド β ペプチドの重合開始機構の 構造生物学的基盤の解明
S iC 表面分解法により生成したカーボンナノチューブアレイ構造への ドーピングに関する研究
S iC 表面分解法におけるカーボンナノチューブの構造制御 920MHz 超高磁場 NMR 装置を用いたタンパク質複合体の構造解析 高周期元素の特性を活かした新規ナノスケール分子の開発 X MC D による吸着 NO の磁性評価
常磁性金属内包フラーレン誘導体の電荷移動特性
湾曲 π 電子系化合物と金属内包フラーレンに基づく超分子系の構築 金属ナノ構造体の増強光電場によるジアセチレン L B 膜の二光子光重合 反応の検討
近赤外色素の合成とその電子状態の解明
有機−希土類ハイブリッド薄膜発光体の基礎物性測定と発光体実装プロ セスの最適化
Pd/US Yゼオライトを触媒とした選択的 C –C 結合形成による環化三量体 合成
スマネン誘導体を1次元精密配列することによる機能性物質検索 超高磁場下での1H スピン拡散 NMR 測定による結晶構造解析法の開発 コイ血液由来の糖鎖(ペンタオース)の NMR スペクトル(NOE SY )の測定 S iC 表面分解法におけるカーボンナノチューブの構造制御
ナノスケール高周期超原子価典型元素分子の開発と性質の解明 S iC 表面分解法におけるカーボンナノチューブの構造制御
金属ミラー保護膜表面の元素分析(A L MA型 B and4 受信機カートリッジ 常温光学系ミラー)
ナノサイズ分子キャビティを活用した活性化化学種の反応性制御 F e/A g(116) 薄膜における量子井戸効果のX線磁気円二色性による研究 典型元素と遷移元素を骨格に含む新しい芳香族性の構築とその性質の論 理的解明
佐 藤 宗 太 柳 澤 勝 彦. 丸 山 隆 浩. 丸 山 隆 浩 矢 木 宏 和 時 任 宣 博 奥 山 弘 赤 阪 健 土 屋 敬 広 坂 本 章. 宇 野 英 満 西 山 桂. 奥 村 和. 岡 崎 俊 也 朝 倉 哲 郎 青 木 恭 彦 丸 山 隆 浩 箕 浦 真 生 丸 山 隆 浩 岡 田 則 夫. 後 藤 敬 Marek.Przybylski 齋 藤 雅 一 東京大学大学院工学系研究科
(独)国立長寿医療センター研究所. 名城大学理工学部.
名城大学理工学部
名古屋市立大学大学院薬学研究科 京都大学化学研究所
京都大学大学院理学研究科 筑波大学生命領域学際研究センター 筑波大学生命領域学際研究センター 埼玉大学大学院理工学研究科. 愛媛大学大学院理工学研究科 島根大学教育学部.
鳥取大学大学院工学研究科.
(独)産業技術総合研究所 東京農工大学大学院工学研究院 三重大学大学院生物資源学研究科 名城大学理工学部
北里大学理学部 名城大学理工学部
国立天文台先端技術センター. 東京工業大学大学院理工学研究科 Max-Planck.Institut.(Halle,Germany) 埼玉大学大学院理工学研究科 NMR
NMR . T E M. E S C A NMR 量子計算 磁気光学 量子計算 有機材料 S NOM. 有機材料 有機半導体. 有機材料. 有機材料 NMR NMR 有機半導体 量子計算 S E M/F IB S E M/F IB . 量子計算 磁気光学 量子計算
(2) 施設利用
. 課 題 名(前期). 支援装置. 代 表 者
スタフィロコッカル・ヌクレアーザの NMR 解析
金ナノ粒子ハイブリッドの電子線回折,顕微鏡写真,元素分析 フッ化物薄膜を用いた紫外線検出器開発
カーボン系および非カーボン系薄膜材料の開発および評価 ナノ領域の特異現象と 46 億年前の微粒子形成
発光性シリコンナノクラスターの構造評価 金属を内包したメソポーラスカーボンの形態観察 金属を内包したメソポーラスカーボンの形態観察 ナノ領域の特異現象と 46 億年前の微粒子形成 固体 NMR によるゴムの劣化メカニズム解明
超高磁場固体 NMR によるラセン高分子の動的構造解析 シリコンナノチューブの構造解析
高出力パルススパッタ HIPIMS を用いたナノ構造制御成膜法による窒化チタ ンアルミニウムおよび窒化クロムアルミニウム皮膜の構造解析および評価 高出力パルススパッタ HIPIMS を用いたナノ構造制御成膜法による窒化チタ ンアルミニウムおよび窒化クロムアルミニウム皮膜の構造解析および評価 高出力パルススパッタ HIPIMS を用いたナノ構造制御成膜法による窒化チタ ンアルミニウムおよび窒化クロムアルミニウム皮膜の構造解析および評価 アセチリド化合物の自己組織的ナノらせん構造構築の起源解明 アセチリド化合物の自己組織的ナノらせん構造構築の起源解明 π 共役系ラセン高分子の側鎖置換基の精密構造解析
単糖および多糖の水和と構造変化に関する研究
槇 亙 介 木 村 啓 作 小 野 晋 吾 滝 沢 守 雄 木 村 勇 気 根 岸 雄 一 西 信 之 西 信 之 木 村 勇 気 小 林 将 俊 平 沖 敏 文 夛 田 博 一 塚 本 恵 三. 塚 本 恵 三. 塚 本 恵 三. 十 代 健 十 代 健 馬 渡 康 輝 前 林 正 弘 名古屋大学大学院理学研究科
兵庫県立大学理学部
名古屋工業大学大学院工学研究科 積水ナノコートテクノロジー(株) 東北大学理学研究科
東京理科大学理学部 名古屋工業大学ながれ領域 名古屋工業大学ながれ領域 東北大学理学研究科 住友ゴム工業(株)
北海道大学大学院工学研究院 大阪大学大学院基礎工学研究科
(株)アヤボ.
(株)アヤボ.
(株)アヤボ. 日本大学文理学部 日本大学文理学部
室蘭工業大学大学院工学研究科 名城大学農学部
NMR T E M S E M/F IB S E M/F IB T E M T E M T E M S E M/F IB S E M/F IB NMR NMR T E M S E M/F IB . T E M. E S C A . T E M S E M/F IB NMR NMR
. 課 題 名(後期). 支援装置. 代 表 者
スタフィロコッカル・ヌクレアーザの NMR 解析 フッ化物薄膜を用いた紫外線検出器開発
カーボン系および非カーボン系薄膜材料の開発および評価 ナノ領域の特異現象と 46 億年前の微粒子形成
金属を内包したメソポーラスカーボンの形態観察 金属を内包したメソポーラスカーボンの形態観察 ナノ領域の特異現象と 46 億年前の微粒子形成 固体 NMR によるゴムの劣化メカニズム解明
超高磁場固体 NMR によるラセン高分子の動的構造解析 シリコンナノチューブの構造解析
高出力パルススパッタ HIPIMS を用いたナノ構造制御成膜法による窒化チタ ンアルミニウムおよび窒化クロムアルミニウム皮膜の構造解析および評価 高出力パルススパッタ HIPIMS を用いたナノ構造制御成膜法による窒化チタ ンアルミニウムおよび窒化クロムアルミニウム皮膜の構造解析および評価 高出力パルススパッタ HIPIMS を用いたナノ構造制御成膜法による窒化チタ ンアルミニウムおよび窒化クロムアルミニウム皮膜の構造解析および評価 アセチリド化合物の自己組織的ナノらせん構造構築の起源解明 アセチリド化合物の自己組織的ナノらせん構造構築の起源解明 π 共役系ラセン高分子の側鎖置換基の精密構造解析
単糖および多糖の水和と構造変化に関する研究 一次元 sp3 カーボン材料のキャラクタリゼレーション 製造条件差による樹脂フィルム化学構造差についての検証 発光性シリコンナノクラスターの構造評価
槇 亙 介 小 野 晋 吾 滝 沢 守 雄 木 村 勇 気 西 信 之 西 信 之 木 村 勇 気 小 林 将 俊 平 沖 敏 文 夛 田 博 一 塚 本 恵 三. 塚 本 恵 三. 塚 本 恵 三. 十 代 健 十 代 健 馬 渡 康 輝 前 林 正 弘 小 澤 理 樹 土 谷 薫 根 岸 雄 一 名古屋大学大学院理学研究科
名古屋工業大学大学院工学研究科 積水ナノコートテクノロジー(株) 東北大学理学研究科地学専攻 名古屋工業大学ながれ領域 名古屋工業大学ながれ領域 東北大学理学研究科地学専攻 住友ゴム工業(株)
北海道大学大学院工学研究院 大阪大学大学院基礎工学研究科
(株)アヤボ.
(株)アヤボ.
(株)アヤボ. 日本大学文理学部 日本大学文理学部
室蘭工業大学大学院工学研究科 名城大学農学部
名城大学理工学部
ソニーイーエムシーエス(株) 東京理科大学理学部
NMR S E M/F IB S E M/F IB T E M T E M S E M/F IB S E M/F IB NMR NMR T E M S E M/F IB . T E M. E S C A . T E M S E M/F IB NMR NMR T E M 有機半導体 T E M
5-6 最先端・高性能スーパーコンピュータの開発利用
次世代ナノ統合シミュレーションソフトウエアの研究開発
(文部科学省)
2006年4月より開始した表記のプロジェクトは本年度末(2012年3月31日)で終了した。我々は「次世代スパ コン」プロジェクトの一環として,わが国の近未来の学術,産業,医療の発展に決定的なブレークスルーをもたらす 可能性をもつ三つのグランドチャレンジ課題を設定し,その解決を目指して,理論・方法論およびプログラムの開発 を進めてきた。
(1) 次世代ナノ情報機能・材料
. ナノ物質内の電子制御をシミュレートできる方法論を確立する。 (2) 次世代ナノ生体物質
. ナノスケールの生体物質に対して,自由エネルギーレベルでの相互作用,自己組織化,また動的な振る舞いを シミュレートできる方法論を確立する。
(3) 次世代エネルギー
. 高効率の触媒・酵素の設計ができる方法論を確立する。
これらのグランドチャレンジ課題はいずれも従来の物理・化学の理論・方法論の「枠組み」あるいは「守備範囲」を はるかに超えた問題を含んでおり,ただ,単に計算機の性能が飛躍的に向上すれば解決するという種類の問題ではな く,物理・化学における新しい理論・方法論の創出を要求している。さらに,構築が予定されている「次世代マシン」 は従来の常識をはるかに超えるノード数からなる超パラレルプロセッサーであり,プログラムの高並列化を始めとす る「計算機科学」上のイノベーションをも要求している。
「ナノ統合拠点」は上記の三つのグランドチャレンジ課題を解決するために必要な理論・方法論およびプログラム の開発を進めると同時に,その実証研究を進めてきた。本稿ではその成果をまとめた。
5-6-1 中核アプリを中心とする「次世代ナノ統合ソフトウエア」開発
我々が開発しているアプリケーションは次の3つの階層構造から成り立っている。
中核アプリ:ナノ分野の研究にとって基本的な量子力学,統計力学,分子シミュレーションに関する6本のアプリケー ション。
付加機能ソフト:上記6本のアプリケーションを様々に組み合わせて,マルチスケール・マルチフィジックス問題を 解決したり,構造探索を効果的に行なうなどの目的に対応するプログラム群。
連携ツール:「中核アプリ」と「付加機能ソフト」をシームレスに連結するためのツール群および蛋白質一次配列情 報やポテンシャルパラメタなどの初期インプット情報を生成するためのプログラム。(資料1)
資料1
「次世代ナノ統合ソフトウエア」の開発においては,中核アプリ(6本),付加機能ソフト(38本),連携ツール(2 本)の開発を行い,いずれも「京」システム向にポータルを利用して公開した。このうち,6本の中核アプリに関す る成果を下記の表にまとめた。
5-6-2 学術的研究成果
本開発研究の過程で,それぞれの段階の方法論やプログラムの有効性を実証するための研究を行なってきた。以下 に,プロジェクト開始時からの学術的研究成果を表にまとめた。
5-6-3 プログラム公開に向けた取り組み
本プロジェクトは国家プロジェクトであり,そこで開発されたプログラムは「公開」を原則とする。一方,本プロジェ クトで開発されたプログラムの多くは過去の履歴をもっており,公開に関しては様々な制約を帯びている。同時に, 本プロジェクトで解決を目指している課題の多くは新規の理論や方法論の開発など基礎研究の要素をもっており,研 究者(開発者)のクレジットやプライオリティが保証されなければならない。「産」「学」「官」の間で,これらの二 つの要素を考慮した「プログラム公開」の原則を確立するための意見調整を行ない2012年3月1日に公開した。
5-6-4 本プロジェクトにおける注目すべき成果
[計算科学上の成果]
計算機(情報)科学分野の研究者との共同で,これまで「困難」あるいは「不可能」といわれていた数値計算アル ゴリズムの超高並列化を達成した。
(1)押山グループ(東大)と佐藤グループ(筑波大)及び理研との共同による実空間密度汎関数法(R S D F T )の開発。 この成果は2011年度のゴードン・ベル賞に輝いている。
(2)平田グループ(分子研)と佐藤グループ(筑波大)との共同による 3D -F F Tの超高並列化(一万ノード)。従来, 3D -F F Tは並列化が不可能と考えられていたが,その常識を打ち破った。
(3)遠山グループ(京大)と町田グループ(原研:クレスト)との共同で,巨大粗行列の対角化に関する超高並列 化を達成した。
[学術上の成果]
平田グループは 3D -R IS M 理論に基づき,「生命現象」の統計力学とも呼べる新しい学問分野を創出した。
[社会貢献]
少なくとも,3つの方法(3D -R IS M,.R eplica.exchange,.F MO)が具体的に知的創薬研究に応用され,社会的注目を集 めつつある。
5-7 「革新的ハイパフォーマンス ・ コンピューティング ・ インフラ (HP C I)の構築」
HP C I 戦略分野2「新物質・エネルギー創成」
計算物質科学イニシアティブ (C MS I) における計算分子科学研究拠点
(T C C I) の活動について(文部科学省)
5-7-1 はじめに
(1) C MS I について
次世代スパコン京の戦略的活用を目指す5つの戦略分野において公募の結果,分野2新物質・エネルギー創成を担 う戦略機関として東大物性研(代表),分子研,東北大金研が選定された。この3機関を纏める形で,計算物質科学 拠点(C MS I)が設置され,物性研に事務局が設置された(統括責任者:常行真司東大教授)。詳しくは,分子研レター ズ 64.P56–P57 をご覧頂きたい。
分子研では,この戦略機関の責務を担うため,計算分子科学研究拠点(T C C I)を設置し,平成23年度より5年間 の活動を開始した。
(2) 戦略課題研究と計算科学技術推進体制構築について
C M S I の担う大きな責務として,京を利用する戦略課題研究の推進と計算科学技術推進体制の構築がある。前者に ついては,大きく4つの部会が設置され研究が進められている。各部会には,当面重点的に推進する重点課題と,次 の重点課題たる特別支援課題が選定されている。各部会の課題は,以下の通りである。
第1部会:「新量子相・新物質の基礎科学」 第2部会:「次世代先端デバイス科学」 第3部会:「分子機能と物質変換」 第4部会:「エネルギー変換」
これらの部会で,分子科学が担当する重点課題を図1に示す。T C C I が支援する特別支援課題を図2に示す。
図 1 分子科学が担当する重点課題
図 2 T C C I で支援する特別支援課題
計算科学技術推進体制の構築では,幅広く分野振興を行うもので,T C C I としては,分子科学の分野において計算 科学の推進体制の構築と戦略課題研究の推進を行うことが求められている。以下,本稿では,T C C I における平成23 年度のこの活動の報告を行う。
5-7-2 T C C I の活動について
(1) 推進体制について
平成23年度の活動を推進するにあたって図3のような推進体制を構築した。左側は,研究部門であり,特別支援 課題,重点課題を支援するための組織である。右側が,T C C I としての執行部門であり,各先生にお願いして拠点と して必要な活動を分担して頂いている(図4)。その多くは,上部組織である C M S I の小委員会の機能に対応するも ので,T C C I の責任者は,C M S I の委員も兼務して,C M S I と T C C I で風通しのよい活動をねらっている。特に執行の 要となる運営委員会では,これらの執行部門と前記の部会の分子科学の責任者などから構成し,T C C I の運営に必要 な審議・決定を行うようにしている。
図 3 計算分子科学研究拠点(T C C I)体制
図 4 T C C I の委員会など
(2) 平成 23 年度の実績について
今年度は T C C I 立ち上げの年であり,分子科学分野での立ち位置の確立を目指して以下の活動を行った。
①拠点立ち上げと人材の確保
分子研に本部事務局を,東大駒場に地域拠点を,神戸では理研計算科学研究機構内に神戸拠点を設置した。また, 人材育成・教育担当の教員,研究支援に必要な C M S I 研究員の採用などを行った(図5)。残念ながら,平成23年 度内に採用できなかったポジションも若干残っているが,平成24年度からは要員体制は整う見込みである。
図 5 C MS I 研究員・教員配置
②人材育成・教育
前述のように担当する教員の公募を行い採用した。そして,T C C I では,C MS I の人材育成・教育活動の一環とし て,図6の教育コースを企画推進,或いは共催した。また,平成24年度以降の計画についても企画・検討を行った。
図 6 人材育成・教育
③人的ネットワークの形成(研究会,シンポジウムの開催) 図7に示す研究会・シンポジウムを開催した。
○ T C C I 第2回研究会:T C C I の全体シンポジウムである第2回研究会を理研・計算科学研究機構で開催した。100 名を超える研究者が集り,「京」用プログラム開発の状況や研究の進捗についての発表・議論を行った。今後も, 毎年1回は公開の全体シンポジウムの開催を予定している。
○ T C C I 第1回実験化学との交流シンポジウム:T C C I の関わる有機化学,物理化学,生命科学の実験サイドから計 算科学への期待・要望等に関する交流シンポジウムを開催した。優れた講演者の参加によって,非常に興味深く 有意義なシンポジウムとなった。今後は,T C C I における実験研究者との交流の進捗に合わせて公開シンポジウ ムを開催していく予定である。また,文科省から C M S I へ元素戦略に関する支援要請を受け,T C C I でもその対 応を進めている。そこで,「電池材料」および「触媒」に関する実験および理論計算研究の研究紹介を実験計算 連携検討会にて行った。平成23年度にまとまる予定の新元素戦略に計算化学の立場から積極的に関与していく 予定である。
○ T C C I 第1回産学連携シンポジウム:企業における計算科学の利用と学術研究への期待,T C C I における研究状況 等の紹介・意見交換を通した産学連携を目的に産学連携シンポジウムを開催した。半数近くが民間からの参加で あり,この分野における産学連携への期待の高さが垣間見られる。T C C I では,今回のシンポジウムを切掛けに 産学連携のより具体的な活動を継続的に実施していく予定である。
図 7 研究会・シンポジウム
④計算機資源の提供
自然科学研究機構計算科学研究センターでは,T C C I 活動の一環として,戦略機関向けに平成23年度から計算機 資源の 20% の提供を開始した。センターの計算機システムの更新にともない,平成24年度からは,より多くの計 算機パワーが提供される見込みである。
⑤ナノ統合ソフトの継承について
平成23年度で終了する「次世代ナノ統合シミュレーションソフトウェアの研究開発」で開発されたソフトウェ ア(分子科学)については,継承すべく関係者で打合せを行った。
5-7-3 今後の課題と取組みについて
関係者のご尽力のおかげで,平成23年度は,拠点の立ち上げと,上記のような各種の活動を行うことができた。 感謝したい。平成24年度後半からは,京の本格利用が開始される。この世界最速のスーパーコンピュータを利用し て如何に成果を出していくかが,戦略機関全体に関わる課題である。T C C I としても,重点課題,特別支援課題を担 当される先生方を支援し,少しでも成果創出のお手伝いができればと考える次第である。
また,実験化学との交流及び産学連携は今後も継続発展させていく予定である。特に,産学連携については,学生 のキャリアパス拡大に向けて,シンポジウムでの新規課題の発掘・相談,社会人の再教育の場の提供など,産に対す る一貫性のある対応システムの確立を目指して行く所存である。
5-8 最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム
(文部科学省)
文部科学省は,平成20年度より新たな拠点形成事業として,「最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点 プログラム」(以下,光拠点事業)を開始した。本事業は「ナノテクノロジー・材料,ライフサイエンス等の重点科 学技術分野を先導し,イノベーション創出に不可欠なキーテクノロジーである光科学技術の中で,特に,今後求めら れる新たな発想による最先端の光源や計測手法等の研究開発を進めると同時に,このような最先端の研究開発の実施 やその利用を行い得る若手人材等の育成を図ることを目的として(文科省ホームページより抜粋:http://www.mext. go.jp/b_menu/houdou/20/07/08072808.htm)」実施される。具体的には,光科学や光技術開発を推進する複数の研究機関
が相補的に連結されたネットワーク研究拠点を構築し,この拠点を中心にして(1)光源・計測法の開発;(2)若 手人材育成;(3)ユーザー研究者の開拓・養成を3本柱とする事業を展開する。
この光拠点事業の公募に対して,分子科学研究所は,大阪大学,京都大学,日本原子力研究開発機構とともに,「融 合光新創生ネットワーク」と題したネットワーク拠点を申請し,採択された(http://www.mext.go.jp/b_ menu/houdou/20 /07/08072808/003. htm)。本年度で3年目を迎えるが,既にこの拠点を舞台に,世界の光科学を牽引する多くの素晴ら しい研究成果や人材が生み出されつつある。なお,この他にもう1件,東京大学,理化学研究所,電気通信大学,慶 応義塾大学,東京工業大学によって構成される「先端光量子アライアンス」と題されたネットワーク拠点が採択され ており,これら二つの異なる拠点間の交流による新たな展開も進みつつある。
平成23年度の分子科学研究所における活動内容を以下にまとめる。
(1) 光源要素技術の開発
マイクロドメイン制御に基づく超小型高輝度高品位レーザーの開発において,ウェーハ - スケールの PPM gL N が望 める斜め分極反転に成功した他,原研と QUA D R Aに用いる次世代レーザーモジュールの共同開発を開始した。
深紫外や中赤外領域における新しい超短光パルス発生技術の開発において,アルゴンガス中にチタンサファイア レーザーの出力の基本波(800.nm)と二倍波(400.nm)を重ね合わせて集光し,四光波混合過程による波長変換によっ て,. 2–20. µm まで広がった中赤外光スペクトルを発生させた。2. µm と 20. µm では,10 倍も波長が異なっているが,そ の全帯域において,光がコヒーレントに重ね合わされ,中赤外光が約半周期しか振動しないような,ハーフサイクル パルスになっていることを確認した。
超 高 精 度 量 子 制 御 技 術 の う ち, コ ヒ ー レ ン ト 制 御 技 術 を 分 子 集 合 体 や 凝 縮 相 に 適 用 す る た め の 研 究 開 発 で は, C R E S T研究として進めている超高速量子シミュレーターの開発に必要な光格子ポテンシャルの作成,およびさきが け研究として進めている固体パラ水素結晶中での時空間コヒーレント制御において,京都大学の野田進教授の面発光 レーザーが有効であることが期待される。今年度は,野田グループとの研究交流を通じて,面発光レーザーの将来的 な導入に向けた準備を進めた。また,超高速量子シミュレーターの開発においては,分子性結晶をモデル化するため に R b 原子だけでなく R b2分子を用いることが望ましい。極低温の R b2分子を生成するための技術開発の一環として, 同技術開発のパイオニアである Heidelberg 大学物理研究所長の Matthias. W eidemueller 教授との研究交流を進めた。ま た,バルク固体のコヒーレント制御実験(C R E S T )やパラ水素実験(さきがけ)において,同様にバルク固体中の量 子状態の研究を精力的に展開している東京大学の五神真教授(先端光量子科学アライアンス拠点長)との研究交流を 進めた。また,コヒーレント制御技術を分子集合体に適用するための研究開発では,NO–A r 分子錯体における大振幅 な分子間振動を高強度極短パルス光によってコヒーレントに励起した実験結果を,分子間力ポテンシャル上での量子
波束の時間発展に関する数値計算により再現することができた。この成果は,今後,大規模な構造変形を引き起こす ような励起法を探索する上での基盤となると期待される。
時空間分解顕微分光技術の開発では,開口ファイバープローブを用いた近接場光学顕微鏡において,プローブ先端 で約 16. f s のパルス幅を安定に得る技術を確立した。これを用いて,金ナノ微粒子試料のプラズモン励起の位相緩和 を測定し,約 8.fs の緩和時間を観測することに成功した。
極短パルス光源の開発と超高速現象への応用では,これまでに開発したサブ 10 フェムト秒極短パルス光源を用いて, 強レーザー場中分子反応ダイナミクスの追跡を行った。特に N O 分子を用いて,電子励起による電子軌道の形状変化 が強レーザー場における解離性イオン化過程の異方性に反映されることを明らかにした。深紫外域の強レーザーパル スを用いて,多光子吸収による H e 2電子励起状態の生成に成功した。また日本原子力研究開発機構(関西光科学研 究所)の協力をもとに,超短パルス X UV光の波形計測法について理論計算による検討を行った。
(2) 人材育成・施設共用
人材育成では,上述の光源要素技術の開発業務への参加を通じて,他機関の若手研究者や学生の教育を行った他, 大森教授が東京大学グローバル C OE プログラム「未来を拓く物理科学結集教育研究拠点」,東北大学グローバル C OE プログラム「分子系高次構造体化学国際教育研究拠点」で講義を行った。
施設共用では,ナノ秒コヒーレント光源,超高精度光干渉計,走査型近接場光学顕微鏡を拠点内の先端的な共同研 究の資源として提供するための準備を進めた。
さらに,本ネットワークにおける供用研究の推進への寄与を目的として,第4回「最先端の光の創成を目指したネッ トワーク研究拠点プログラム」シンポジウムを主催した。